2009.7.11-14 釧路川カヌー
- 小さなA300で釧路空港に到着。左右に揺れながら着陸したのでちょっとびびる。東京は蒸し暑くてうんざりしたが、釧路は涼しくて快適だ。長袖のTシャツでちょうどいい。
- 摩周行きの切符を買う。1600円也。列車の出発まで時間があるので、駅からすぐそこの和商市場で昼メシ。どんぶりメシを買い、好きな刺身を乗っけてもらう。「勝手丼」というやつである。ツブ貝と塩水ウニがうまかった。1500円也。
- 釧網本線で摩周へ。単線、ディーゼル、一両。森の中を走る。たまに釧路川と、川に浮かんでいるカヌーが見える。気持ちよさそうだ。早く下りたいなあ。
- 摩周に到着。食料調達のため、見当をつけておいた駅前スーパーに行ったが、焼き肉屋になっていた。急遽、駅の裏手にあるスーパーフクハラへ。結構遠い。フクハラのとなりにはホームコンビニツルヤがある。各社のガスカートリッジを置いているのを確認した。後で知ったのだが、川を渡ってY字路を左に行くとJAのスーパーがある。こっちの方がよっぽど近い。
- NECCの車で屈斜路湖へ。湖畔でボス・平塚氏と会って川の情報を教わる。鉄橋から数えて七つ目のカーブに倒木が横たわっており、左端にカヌー一艇が通れるすきまがある。土壁の瀬はそれほどの難所ではなくなった。摩周大橋では橋の下流側の右岸に上陸するのがおすすめだ、上流左岸は道の駅がありうるさい。……とのこと。
- 今日は和琴半島湖畔キャンプ場で一泊する。水場とトイレを完備しており、売店には各社のガス、ビール、食料やつまみなど何でもある。
- 夕メシを食った後、和琴半島の根元の露天風呂に行った。足を突っ込むとむちゃくちゃ熱い。地元のおばちゃんにレクチャーを受け、一番端で湯につかる。底は砂地で、藻がただよっているのがワイルドだ。すぐそこに湖がある。すごい開放感だ。暖まって、9時頃就寝。
- 道東は朝が早い。3時頃に外が明るくなって目が覚めた。4時、昨日入った露天風呂へ。今度はぬるめになっていたので、ゆっくりと湯につかる。朝焼けをながめながら行動計画を立てる。ここはファミリーキャンパーだらけで趣がない。さっさと人のいないところに行きたい。コタンでゆっくりするのはどうだろう。
- そんなわけで荷物をまとめ、7時に漕ぎ出した。曇りだが、山の向こうに晴れ間が見える。和琴半島を回り、おわんを伏せた形の小さい山を目指して漕ぐ。向い風でなかなか近づかない。
- コタンに到着。トイレと店が何軒かある。キャンプはできない。湖のすぐそばに温泉があり、手入れされていて気持ちよさそうだが、ここでは足湯だけにする。早く川に入りたい。
- 出発。湖岸沿いを漕いで眺湖橋へ。釣り人の後ろを通り、身をかがめて橋をくぐる。
- 世界が変わった。両岸は果てしない森である。その間を音もなく川が流れていく。思わず、ウォーと叫んでしまう。流速は6km/h前後。川幅は案外広く、15m±5m。ただし、この6〜7月に降った雨は記録的だったようで、かなり増水していたことを付け加えておく。
- 景色を眺めながら漕がずに下っていたいところだが、頻繁にカーブや倒木が現れるので、絶えず操船しなければならない。かなり忙しい。
- NECC平塚氏に教わったとおり、ドリフトしながらインコースを漕ぐ。アウトにいると倒木をかわせないのである。
- 曲がり角が多くて、どこまできたのかさっぱりわからない。たまに森の中から橋が出現し、対岸のこれまた森の中に消えている。二番目の、美留和橋の手前に二段の瀬がある。遠目で見ても波が高くてちょっとびびるが、両岸は森で上陸できないので、下見やエスケープはできない。このまま突っ切るしかない。船が横を向かないように注意しながら一段目をクリア。二段目はさらに波が荒かった。どきどきしながらこれもクリア。
- 美留和橋をくぐり、左の護岸に船をつけて上陸。パンとチーズの昼メシ。長時間ニーポジションで漕ぎ続けてきたので腰が痛い。
- 長目に休憩して、後半戦に突入。2kmくらい直線が続いた後、またカーブの連続が始まった。四つ目くらいの左カーブを曲がると、流れの真ん中に倒木が鎮座している。右岸にも倒木が張り付いているのが見えたので、急いで左へ。
- 赤茶けた鉄橋をくぐった。ここから七つ目の左カーブに、倒木が川をふさぐ危険箇所があるはずである。カーブの数をカウントしながら進んだが、七つ数えても何事もない。なんだ消滅したのかと思ったら、九つ目を曲がったところで目の前に倒木が横たわっていた(下流から撮影)。これか! と叫んで反転し上流に漕ぎ上がり、左端の隙間を抜けた。危なかった。
- あとはそう危ないところはないのだが、際限のない曲り角と倒木をクリアするのに疲れてきた。そのような状態で、本日最後の難関、「土壁の瀬」に挑まなければならない。
- 流速が増し、轟音が聞こえてきた。右岸が土の崖になった左カーブがある。あれだな! 普通に左折したら、そんなものがあるとは予想してなかった中州がある。右か左か。左の水路は狭く、倒木があったらよける自信がない。そんな予感がしたので、右へ! すると行く先に倒木が横たわっている。また選択肢か。倒木の右に回ると土壁に突っ込むことになるので、左側を選択。しかし浅瀬で思うようにいかず、倒木に張り付いてしまった。一旦フネから下りて、フネを倒木から剥がし、浅瀬を横切って左岸へ歩く。ちょっとあぶなかった。
- 下流には次の右カーブが見えている。アウトコースの左岸に倒木が張り付いているが、邪魔ではない。近づかなければ平気だろう。深呼吸して出発。すぐさまインコースに入ってかわす。そして最後の左カーブ、真の土壁が待っている。が、さっきの右カーブと同じく、どうってことはなかった。アウトコースに倒木が見えるが、近づかなければよい。
- これで土壁の瀬は終り。体力と精神力がかなりすりへったが、もうあぶないところはない。川も直線になった。あとは流されていけばよい。1時過ぎ、摩周大橋に到着。よろよろと上陸し、仰向けにばったり倒れる。途中で休憩したけれど、出発から上陸まで6時間かかっている。長かったなあ。
- 護岸をはい上がると、温泉に日帰り入浴できるというペンションBiraoがあった。その脇を道沿いに進むと焼肉屋がある。そこで二度目の昼メシ。ビールがものすごくうまい。
- 草の上にテントを張り、先のペンションの温泉(日帰り入浴300円)で一風呂浴びた後、摩周(弟子屈)の街を散歩する。街中の釧路川はばっちり護岸されていて、いかにもつまらなそうだ。流れは結構ある。駅のPCで天気を確認。明日は昼前から雨みたいだ。どうするか。明日起きてから決めよう。
- 夕方になったので飲み屋地帯に出撃。ところがこの街は日曜が定休日らしく、どこもやってない。夕飯を作るつもりは全くなかったので焦る。歩きまくってようやく居酒屋兼ラーメン屋を発見。ザンギを註文。850円もする。高いなーと思ったら、20cmの皿一杯に二段に積まれたのが出てきた。数えると十五六個もある。四人分くらいか。がんばったけれど、とても食いきれません。残った五個をつつんでもらい、河原に戻る。今日は疲れた! あっという間に就寝。
- 朝起きたら雨が降っていたので、停滞決定。テントをずるずる引きずって摩周大橋の下に移動。ホームレスっぽいけれど、乾いた空間は重要である。コーヒーを沸かして、昨日の残りのザンギで朝メシ。
- ひまなので散歩に出かけた。明日下る予定の通称「滑り台」を見に行った。川沿いの散歩道を南の方に歩くと、ほどなく到着した。スロープ状の水面が木々の間に吸い込まれている。その先が見えないのが恐ろしい。もう少し歩くと出口が見えた。流れはなぜかまっすぐではなく、右岸にかたよっており、坂を滑り降りてきた水のかたまりが沸き返っている。波がすごくでかい。しかもその先にはテトラポッドが待っている(下流から撮影)。最初から左に離脱したいところだが、そうするとスターンを波に食われてひっくりかえりそうだ。はたしてこれを無事に切り抜けられるか。見ているだけで緊張してきた。その先に第二の滑り台があるはずである。これはさらに落差が大きいがストレートなので第一ほど難しくはないらしい。が、道がなくなったので偵察はできなかった。
- テントに戻って読書。辻村深月「ぼくのメジャースプーン」を読む。大当たり。昼メシを食って、またペンションビラオの温泉へ。キャンプ生活をしているのに毎日風呂に入っている。
- 翌日。霧雨が降っている。ただし天気予報は昼には晴れると言っている。テントをたたみ、荷物をまとめていつでも出られるようにして雨がやむのを待つ。しかしヒマなのでまた町をうろついた。
- 平塚写真館の前を通りかかると、平塚氏が生ゴミの始末をしていた。ポリバケツに入れていたのだが蓋が壊れていて完全に閉まらないのをカラスに開けられ荒らされたそうだ。川の様子を報告し、本題に入る。滑り台をスキップしたいので、その下まで連れてってもらえませんか。OKをいただいたので、平塚氏の車に同乗して橋の下まで戻り、カヌーと荷物を積んで下流方面へ。南弟子屈橋下の左岸に下ろしてもらった。結構流れてんなあ、と言って平塚氏は帰っていった。どうもありがとうございました!
- まだ霧雨がやまないけれど、ここにいても何もすることがないので、出発する。フネを出すと結構な勢いで流れていく。源流部よりまた一段速い。7〜8km/hくらいか。水はコーヒー色だし空は鉛色だし、川下りをしているというよりは、増水した川で漂流している感じだ。
- 川幅は広くなり、曲がり角も少なくなった。相変わらず倒木が邪魔だけど、かなり手前から見えるので、余裕をもってよけられる。ありがたいことに日がさしてきて、ようやく川旅をしている気分になってきた。今回初めて、川の上でビールをあおる。川旅にはこれがないとね。草原が広がっている。空が広い。人がいない。釧路川でのカヌーと言えば源流部と下流の湿原部ばかりで、中流部を下る人はいないようだけれど、これはこれでいいかんじである。
- 開発橋の下にちょっと波の高い瀬があった。
- 瀬文平橋の上流左岸に河原があったので、上陸して休憩。キャンプ可能だが、砂まじりなのでいまひとつかな。橋の上まで登ってみたが、何もなかった。
- 再び川に出ると、両岸が森になり、ジャングルの中を流されている気分になる。もうそろそろ上陸地点の標茶に着くはずである。旅を終らせたくないので、漕ぐのをやめて流されるだけにした。
- 町外れにかかる、ときわ橋が見えてきた。次いで風雲橋、開運橋とくぐって、左岸のカヌーポートに上陸。ここは川の上からは分かりづらいが、六角形の屋根をした東屋が見えたら左に寄せればよい。この東屋は右岸にもあり、目印になる。
- 空はすっかり晴れた。東屋のわきの芝生に濡れもの一切をぶちまけて乾かす。風がさわやかだ。今日の行程は18kmくらいあるようだが、2時間強しかかかっていない。出発をもっと遅くすればよかったか。
- 東屋のそばの舗装道を200mくらい歩くと橋のたもとに出る。階段はないので楽である。宅急便ののぼりがはためく肉屋があった。そこで集荷を頼むと、ほどなくトラックがやってきた。荷物を兄ちゃんに引き渡し、これにて川旅終了。
モドル